社会の情報化についてインフォメーション・アーキテクトと一緒に考えて頂けませんか?

on 2013-03-18 (3 years ago) by 石橋秀仁

はじめまして。石橋秀仁(いしばしひでと)と申します。私の職業は「インフォメーション・アーキテクト」(情報建築家)です。ウェブ・サービスやアプリを開発しています。

今日は自己紹介のような内容を書きたいと思います。なぜ私が「インフォメーション・アーキテクト」と名乗っているのかについて語らせてください。

事例とその紹介文

私の仕事を一つ紹介します。「茶会人訪問」というウェブ・サービスを開発・運用しています。これは就職活動を応援するために、OB・OG訪問のマッチングをするサービスです。この茶会人訪問について、『なぜ就活生はOB/OG訪問すべきか:なぜ「茶会人訪問」を開発したか』という文章を書きました。

このように、自分が作ったものについて、自分の言葉で語ることが大事だと思っています。とくに、社会の中への位置づけ、時代の中での位置づけについて語ることが大事です。

なぜそう考えるかというと、私が「インフォメーション・アーキテクト」だからです。

情報空間の開拓期の次へ備える

社会の情報化は、まだまだこれからです。いまはまだ「開拓期」です。

インターネットの開発者は、何でも自由に作ることができます。それまで何もなかったところに、ポンと新たな「情報空間」が生まれたのですから。そこは未開の地であり、開拓者精神を持つ野心的な人々が盛んに開発しています。代表的なのは米国のシリコン・バレーですが、日本でも多くのウェブ開発者たちが活躍し、いくつも上場企業が生まれています。まさに「ゴールド・ラッシュ」の様相です。

ただし、いつまでも「開拓期」のままで良いはずがありません。開発者も無責任ではいられません。「望ましい開発」を通じて、「よりよい社会」を作る態度がなければいけません。それは「開拓地」を「都市」として秩序立てていくことに似ているかもしれません。

まだまだ開拓期ではありますが、そろそろ次に備えて、いろいろ考え始めてもよい頃合いです。

開発者像としての「アーキテクト」

では、具体的にどのような開発者像が望ましいのでしょうか。私は次のように考えます。

情報化時代(21世紀)の開発者像を考えるうえで、産業化時代(20世紀)の開発者像を参考にすることができます。つまり建築家(アーキテクト)を参考にすることができます。

これが「インフォメーション・アーキテクト」という立場の出発点です。

参考までに言うと、もし「大工」を参考にするなら「インフォメーション・カーペンター」でしょうし、「編集者」なら「インフォメーション・エディター」でしょう。そうではなくて「インフォメーション・アーキテクト」と名乗っています。これでなければならないという必然性があります。

その「必然性」について、詳しく見ていきましょう。

社会におけるアーキテクトの役割

アーキテクトは、社会や時代の文脈のなかに、自身の仕事を位置づけてきました。最も有名なのはル・コルビュジエが1923年に書いた『建築をめざして』という本でしょうか。森ビルの経営者であった森稔氏は、コルビュジエのビジョンから多大な影響を受けたそうです。つまり、森ビルによる都市開発がコルビュジエの思想を引き継いでいると言えます。(参考:森稔氏インタビュー記事

ミース・ファン・デル・ローエによるシーグラムビル(1958年)は、「インターナショナルスタイルの超高層ビルの完成形」と言われます。その姿は、まさに今日私たちが見慣れているビルそのものです。いま世界中に立てられている高層ビルの原型だと言えるでしょう。

開発者と社会をつなぐ言葉

二十世紀の都市計画、ひいては社会のデザインが、アーキテクトのビジョンによって方向付けられてきた、と言っても過言ではないでしょう。ただし、そのビジョンはアーキテクトが勝手に考えだしたものではなく、社会の要請、時代の要請に(結果的に)応えるものでした。歴史の淘汰を生き延び、現在にまで通用しているコンセプトなのですから。

建築家は独りよがりの開発者にならないために言葉を駆使してきました。それを「建築論」や「建築批評」と言います。建築家自身だけでなく、専門の批評家もいます。建築家の実践に、批評のフィードバックがもたらされる。このフィードバック回路により、建築家のビジョンは、独りよがりではなく、社会と時代の要請に応えつつも未来を提示するものとして機能してきました。

インフォメーション・アーキテクトの不在

産業化時代の建築家の役割を振り返って、情報化時代と比べてみると、どうでしょうか。「自分の作品について、社会や時代の文脈に位置づけて語るアーキテクト」をご存知でしょうか。みなさんがご存知のウェブ・サービスについて、その経営トップやアーキテクトは、社会に向けて言葉を発しているでしょうか。

私は情報空間にも「アーキテクト」が必要だと考えています。社会と時代の要請を汲み取りながら、数十年スパンで物事を考えるアーキテクトが、情報化社会にも必要だと考えています。

だから私のアイデンティティは「インフォメーション・アーキテクト」です。そして、インフォメーション・アーキテクトの仲間を増やしていくつもりです。

あなたへのお願い

もしあなたが情報空間の開発に関わる仕事をしているなら、この文章で意味している「インフォメーション・アーキテクト」という言葉について考えてみてください。「インフォメーション・アーキテクト」という言葉をすでにご存知だった方でも、そのイメージと大きく異なる内容に戸惑われたかもしれません。率直な感想をお聞かせください。

情報空間の開発と関係のない仕事をしている方も、すでに情報空間の中で生活しているはずです(この文章を読んでいるということは、そういうことです)。情報空間の中での様々な疑問について、インフォメーション・アーキテクトに率直に質問してみることから(もちろん私宛でも)、専門的に批評することまで、様々なかたちで情報空間について語ってみてください。

それが、社会の情報化を、よりよい方向へ導いていくのだと信じています。

これから、このブログを通じて、みなさんと一緒に、色々なことについて考えていきたいと思います。何か気になること、とりあげてほしいトピックがあれば、気軽にコメントしてください。