名前に二重線を引き、別名で訂正してある名刺の写真

これから社会人デビューする人々や、それを受け入れる企業への助言です。

背景

人々がソーシャルメディアを自由に利用できる社会が望ましい。しかし、「ソーシャルメディアリスク」を気にする人や会社が増えています。従業員のソーシャルメディア利用による炎上を恐れる企業が増えています。そのことは従業員のソーシャルメディア利用を萎縮させてもいます。つまり、ソーシャルメディアを「自由」に利用できなくなりつつあるのです。

問題

どうすれば従業員の自由なソーシャルメディア利用を妨げずに済むでしょうか?

解決策

プライバシーを守るための〈ビジネスネーム〉を持ちなさい。いわゆる「本名」とは別の、「ビジネス人格」で用いる名前です。芸能人が「芸名」と呼ぶものです。

解説

〈ビジネスネーム〉(いわゆる「通名」)を持てと言われてギョッとした人もいるかもしれません。まだ「常識」になっていないからです。しかし、冷静に考えてみてください。これは合理的ですし、実際にはほとんど問題が起こりません。

「A社のXさん」について、その「X」という名前を住民票や戸籍で確認したことはありますか? また、そのような人がいるでしょうか? あなたが入社時から別名で活動するなら、それによる問題はまず起こらないでしょう。社内のほぼ全員、および社外のほぼ全員に対して〈ビジネスネーム〉で通せばよいのです。

例外的にあなたの「本名」を知ることになる人もいます:

  1. 採用・法務担当者:法的な雇用契約書には、あなたの住民票記載名を用いることになるでしょう。

  2. 総務・労務担当者:雇用保険、社会保険(年金・医療保険)などの手続きに際して、あなたの「被保険者名」を知ることになります。これは住民票や戸籍と同じ名前でしょう。

  3. それ以前からの知人:家族はもちろん、近隣住民や学友などが該当するでしょう。同窓会への出席時には注意が必要です。写真を撮影され、コメントで「本名」を書かれてしまうなど。

そういう人々には、あなたが新しい〈ビジネスネーム〉を使い始めたことを伝え、それについてプライバシー上の配慮をしてもらうようお願いすればよいでしょう。

なお、扇千景は〈ビジネスネーム〉のまま国務大臣を務めました。森田健作も〈ビジネスネーム〉のまま千葉県知事を務めました。

あとがき

「〈ビジネスネーム〉を持つ」という知恵は、私が社会人デビューする前に欲しかった助言です。というのも、私はもはや顔と名前が売れてしまっているので、後戻りできません。まだ何者でもない「無名」の段階で導入しなければ、〈ビジネスネーム〉の意味がありません。

こういった知恵を「プライバシー・パターン」ないし「社会人デビュー・パターン」として整備して、学生に提供したいですね。

そして企業の理解も必要です。「隗より始めよ」という諺にならって、ゼロベース株式会社は〈ビジネスネーム〉の利用が可能であると宣言しておきます。日本では「空気」が物事を決めますから、事例の蓄積によって「空気」を変えていくことも大事です。あなたの勤め先ではどうですか? 〈ビジネスネーム〉の使用を許可し、それを公表してください。例えば採用情報ページに

当社は従業員のプライバシーを尊重しています。通名(ビジネスネーム)の使用を許可しています。

と記載してください。

〈ビジネスネーム〉の利用が可能な「空気」をつくっていきましょう。

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